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はじめに

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界中に感染が拡大し、現在でも予断を許さない状況が続いています。仮に今後、感染拡大が終息に向かったとしても、さらなる感染の波が襲ってくる可能性もあり、現時点では感染がピークとなる時期やその程度すら判然としない状況です。

このような状況を受けて、国内の企業においても既に多大な影響が生じていますが、これらの影響を受けて企業が検討すべき法的課題は多岐にわたります。

Ⅰ.テレワークの導入

国や地方自治体から外出自粛や休業要請がなされたことを契機に、各企業においてソーシャルディスタンス確保のため在宅勤務(テレワーク)や時差出勤といった方策が採られましたが、使用者として安全配慮義務を履行する観点からも、テレワーク等の導入を検討していくことが有用です。

テレワークを導入する場合、使用者は業務実態を直接確認することができないため、中抜け時間の問題など、どのようにして労働時間を管理するのかが課題となります。フレックスタイム制、事業場外みなし労働時間制、裁量労働制の導入も選択肢の一つとなりますし、これらの導入とあわせて、就業規則等の社内規程を再整備していくことが望まれます。

また、テレワークを導入する場合、企業の秘密情報や顧客の個人情報が社外に流出するリスクが高まるところ、企業として秘密保持義務を順守するため、各ガイドライン等を参考に、情報セキュリティの確保を再検討する必要があります。 

Ⅱ.人件費

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う自粛及び経済活動の停滞により、業務量の減少や業績の大幅な悪化が生じた企業においては、人件費を節減するべく賃金カットや人員削減を図ろうとする企業も多いかと思いますが、労働基準法や労働契約法といった労働法上の規制があるため、これらの規制に反しない形で対応する必要があります。

 また、営業を継続することができず、事業所や店舗の全部又は一部休業に追い込まれた企業も多いかと思いますが、休業する場合においても、労働基準法26条との関係で、休業手当の支払が必要となるかどうかを検討しておく必要があります。

検討事項

第1.賃金カット

第2.人員削減

1.退職勧奨

2.整理解雇

3.内定取消し

第3.休業と休業手当

1.新型コロナウイルス感染症を理由として事業所を休業する場合における、労働者に対する休業手当の要否

 (1)自主的判断による休業の場合

 (2)法律に基づく要請による休業の場合(休業要請等)

2.新型コロナウイルス感染症に感染した者に対する休業手当の要否

3.感染が疑われる者に対する休業指示と休業手当の要否

4.派遣労働者と休業手当

Ⅲ.営業・取引上の検討事項

営業・取引の場面においても、世界的な新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、①製造業を営む企業が、製造に必要な資材の輸入や納入を受けられず、契約期限内に目的物を納入できずに納期変更を求めるケースや、売上の減少により、従前の原材料等の仕入れを一部キャンセルするケース、及び②売上が減少したテナントが、賃貸人に対して賃料減額請求を求めるケースの相談が増えています。このような変更を求める際には、事前に法的根拠を整理・検討する必要があるほか、相手方企業においても、当該企業に対する債権回収・与信管理を再度見直していく必要があります。

また、介護施設や旅館等の宿泊施設を営業している事業者においては、顧客を新型コロナウイルス感染症に感染させた場合、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求を受けるおそれがあるため、安全配慮義務違反に問われないための対応策を検討する必要があります。

検討事項

第1.売買契約・請負契約

1.納期変更の可否

   不可抗力条項、債務不履行責任

2.目的物の受領拒否

   事情変更の原則

第2.賃貸借契約

1.休業要請に基づく休業と賃料支払拒否

2.売上減少に伴う賃料支払拒否・賃料減額請求

第3.債権回収・与信管理

1.信用不安に陥った取引先

2.倒産見込みの取引先

第4.顧客を新型コロナウイルス感染症に感染させた場合の損害賠償義務

Ⅳ.補助金・助成金

 新型コロナウイルス感染症による企業への影響を緩和するため、国や地方自治体から、企業支援のための補助金や助成金、融資施策、税制施策が採られています。その内容は、家賃補助から、雇用助成、販路開拓支援、テレワーク導入支援など多岐にわたり、利用条件も異なるため、どの制度を利用するのが効果的か検討した上で、積極的に活用していくことが求められます。 

Ⅴ.その他の法的課題

その他にも、新型コロナウイルス感染症影響下における株主総会や取締役会運営の在り方や、新型コロナウイルス感染に関する個人情報の取り扱いなど、検討すべき法的課題は多岐にわたります。

検討事項

第1.株主総会運営

1.来場自粛要請

2.バーチャル総会

第2.取締役会運営

第3.新型コロナウイルス感染に関する個人情報の取り扱い

以上のように、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、企業の運営方法が大きく変わりつつあり、それに伴って検討すべき法的課題が多く生じています。

著者情報

G&S法律事務所

パートナー弁護士 小里 佳嵩

パートナー弁護士 野崎 智己

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